ゴジラ-1.0
終戦直後。
生きていくことだけで精いっぱいの日本にあんな怪獣が登場したら絶望すぎて、一体だれがどうやって解決させるの?
解決方法思いつかな過ぎて、モスラが登場するしかないんじゃ、、なんてマジで思ったもんね。
面白かったです。
海上でゴジラと対する場面は迫力満点で、今まで見たゴジラで一番怖かった。
山崎貴監督の専門分野であるVFXによる映像のクオリティの高さが発揮されてて素晴らしく、125分間一瞬たりとも気がそれることなくずっと集中して見た。
最後も大団円(←すぎるくらい)で終わって涙して、見終わっての素直な感想は、遊園地に行ってものすごく面白いアトラクションに乗ってすんごい楽しかった~~!っていう感覚ですかね。
あえていうなら、ゴジラの映画なのに、あんなにかっこよくて怖かったゴジラなのに、元特攻隊員として苦悩する敷島の物語であることに比重が行き過ぎて、なんかゴジラの存在感が弱いような気もする。
登場する人たちが昭和的(1947年だから当たり前か、、)
セリフも若干説明口調っぽいし、いろいろ考えてるうちになんか賛否両論でてきちゃうってね、それって考えたら山崎貴監督作品に多い鑑賞後感かもしれない。私的にあんまり相性が良くない印象だったんですよ。
総じて面白かったです!
公開3日間で10億円の興行収入ですって、すごいね。
あの「シン・ゴジラ」の次の作品としてこれを作り出したことが素晴らしいです。
相性良くないなんて思っちゃってすいません~☆
窓辺にて
かなりの会話劇で始まり、登場人物の関係性をつかむまでは少しとまどったけれど、妻の浮気を知っても、怒ることも言い出すこともできないフリーライター・市川茂巳の物語であると理解してからはすんなり入ってきた。
会話と生活音、音が途切れる瞬間もあり、彼らの日常生活に溶け込んだようなゆったりしたリズムが心地よかった。
妻に浮気されたのに怒りが湧かない主人公市川茂巳(稲垣吾郎)
浮気しながら感情が見えない市川紗衣(中村ゆり)
茂巳の友人でこれまた妻に内緒で浮気している有坂正嗣(若葉竜也)
その浮気相手でタレントの藤沢なつ(穂志もえか)
不倫の話だけど、そこがメインテーマでもないんですよね。
そもそも浮気というか、人を愛するって何だろうって考える。
「ラ・フランス」という作品で受賞した高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)が物語を良い感じに動かしていて
交際相手への素直な感情が可愛くて面白い。
手に入れたものと、手放す人の話。
ちょっと哲学的。
タクシー運転手がパチンコって時間も金を消費していく贅沢な時間だって話から、パチンコに行くところ面白かったね。
今泉監督が稲垣吾郎を当て書きした脚本だけあって、すごくしっくりくる。
主人公が稲垣吾郎そのもののように感じるんだけど、でも主人公は吾郎ちゃんじゃなくて市川茂巳なんだよね。
絶妙な演技力でした、素晴らしい。
タイトルの「窓辺にて」
カフェの窓辺で思いがけず高校生作家の久保留亜とパフェを食べることになった光のような瞬間、そして光(光の指輪)
理屈ではなくあぁ、人生って瑞々しく幸せに溢れてると感じることができる。
彼らの心情はほぼ観てる私たちに託されてて、だからこそいつまでも考えてしまう思慮深い作品。
やっぱり今泉監督最高です。
金の糸
岩波ホールが7月に閉館と知って「金の糸」観てきました。
ラナ・ゴゴベリゼ監督は1928年生まれで撮影時は91歳だそうです。
すごいな、うちの母とほぼ同じ年☆
予告編の静かな雰囲気も好きなものでしたが、今この時代にジョージア映画を閉館間際の岩波ホールで鑑賞するっていう巡りあわせに思うところがありました。
79才の作家エレナ、エレナのかつての恋人で車いすで過ごす建築家アルチル、ソビエト時代に政府の高官だったミランダ(娘婿の母)
いわゆる老人の物語ですよ、足が悪くて自由に出かけられないので、舞台はほとんどがエレナの自宅(アルチルは自分のマンションのような家)
でも決して狭い世界で生きているのではなく、想像豊かに暮らしているように見える。
ソ連構成国だったグルジア時代から今までの激動を生き抜いてきた人たち、反発しあいながらも今という時間を共に過ごす。
91分という短い上映時間ながらも懐の深いたっぷりとした作品。
ゴゴベリゼ監督は母親も監督で、ソ連時代に約10年の強制収容所で過ごした過去があるそうで、
今作の主人公の人生と国の歴史が重なりが見事に描かれてました。
タイトルの「金の糸」は日本の金継ぎのことで、壊れてしまった過去を未来のために金で継ぎ合わせていく。という意味だそうで、
ウクライナ情勢に心痛める昨今で、そういう未来が訪れてほしいと願いながらも、簡単に口に出せないくらいの複雑な心情です。
石畳の中庭を囲む古い家の静かな暮らしがとても素敵。
私がエレナの年齢になるまではまだ少しあるけれど、決して遠くもなく(笑)、
赤い髪のエレナがとてもチャーミングで、
さあ、私はこれから何をしましょう、、と考えてしまいました。
ボクたちはみんな大人になれなかった
どっかで聞いたことがあるタイトルだなぁって思ったら、燃え殻さんに興味あって何冊か購入して読もうと思ってたんだった(笑)
ポケベル・Stussy・ポータブルMDプレーヤー・小沢健二・ノストラダムス、、
90年代のファッションやカルチャーが満載でリアルタイムに過ごした人には懐かしいのかもしれない。
私はもうちょっと大人なのでね。
主人公の21才から46才までの物語で、46才のコロナ渦の今から始まって21才まで遡って描かれる。
結果があって、どうしてここに辿り着いたのかと思いながら観るので、余計にエモーショナルな印象を受ける。
初めてできた彼女「かおり」との出会いがとても重要で、普通でないのがいいという価値観。
うん、わからないでもない。
そういう気持ちは確かにあった。
でもいつのまにかそんなこと考えもしなくなっていた。
その時、その場所でいろんな人に会って、過ごした経験の積み重ねで今があるんだなって、ちょっと自分のことを振り返ったりした。
確かにそこにあって、過ごした時間たち、自分を形成してくれたものたち、でも今は存在しないもの。
ホント「普通」なんですよ、でもかけがえのない大切な今の普通。
大人になれなかったけれど、いつのまにか大人になってるんですよ、、なんか禅問答みたいな結論です。
空白
「空白」の英題は「intolerance」、不寛容という意味。
感情のままに暴言を吐く、他人の感情を推し量ろうとしない、そして娘に無関心だった父。
店長はひたすら謝るだけ、人との関わりがとても苦手そうな人。後ろ向きな思考で感情が見えにくい。
開始早々に死んじゃった娘ちゃんが可愛そうだった。
存在感が薄くて、意思表示が苦手で、友達に何の印象も持たれないまま、この世から消えてしまった。
絵が上手だったんだよ、描くことで自分を表現していたんだね。
彼女は万引きをしたのか、真実はわからない。
店長は彼女にいたずらをしたのかも事実はわからない。
責任転嫁するように、あえて青柳の噂程度の話を父親に耳打ちする学校に嫌悪を感じた。
スーパーで働くベテラン店員は間違ったことははっきり正す、そしてボランティア活動に精を出し、自分を善意の人として自覚することで立っている人。
でも頑張っているのに周りと全く噛み合わない。
不協和音ガンガンなりまくりの方々。
疲れる、、現実にそうやって疲れてる人はたくさんいる。
「どうやって折り合いをつけるんだろう」
最後に古田新太さんが放った言葉でなるほどとちょっと納得した。
折り合いをつけることがとても苦手な人たちの物語だったんだなって。
でもラストに起きた些細な出来事で少しだけ気持ちが救われた。
すれ違いながら、不協和音を奏でながら、折り合いをつけることは簡単じゃなく、
でも結局は人との触れ合いにホッとしながら生きていくもんなんだろな。
演技の巧い俳優だけで作ったって監督さんが言うくらいですから、本当に面白かったし、だからこそ観ていてずっしり疲れた(笑)
今回も自らの脚本でオリジナル作品。吉田恵輔監督作品は期待を裏切らない、ほぼ傑作です。
少年の君
アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた、デレク・ツァン監督による香港製作の青春サスペンス
濃密な2時間15分、一瞬で引き込まれて、どうなるのかとハラハラして、
心底ズドンときました。
進学校で成績優秀でイジメのターゲットにされているチェンと、親もなく学校にも行かずに生きる少年シャオベイの物語。
いじめ
受験戦争
貧困
多くのテーマが混在しつつ、彼女たちが大人になっていく物語であり、
そしてなにより屈指の純愛映画。
ありがちなテーマだけど、デレク・ツァン監督の手腕が光る作品で、脚本も素晴らしく、映像も魅力満載だった。
高校生役のチョウ・ドンユイさんは小柄で中学生にも見えるくらいなのに、数年後の先生役もちゃんと大人に見えてびっくり(実際は28才くらいらしい)
シャオベイはボーイズグループのメンバーだそうで日本で言ったらジャニーズの誰か(誰だろ~)といったところ。
惹きこまれました。
子供の世界は大人の映し鏡なんだけれど、
子供たちは子供たちの世界で必死に闘っている。
岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」を思い出すと言っていた人がいたけれど、
確かに子供たちが闘ってた。
自分の力で生きていけるように、頑張って生き延びてほしいと願った。
感動しました。